2016年4月16日に南阿蘇村の東海大学農学部は熊本地震により壊滅的な被害を受け、校舎及び学生が居住する学生アパート数棟が壊れ、3名の学生の尊い命が奪われました。それから3年の年月を経て、南阿蘇の校舎敷地の一部を実習フィールドとして活用するため、去る3月18日に実習用の建物の竣工式を行いました。熊本県の田嶋徹副知事や南阿蘇村の吉良清一村長など多くのご来賓にお越し頂き、盛大に竣工を祝う事が出来ました。

■阿蘇実習フィールドに実習場の建物を整備しました
https://www.u-tokai.ac.jp/academics/undergraduate/agriculture/news/detail/post_92.html

東海大学は全国各地の自治体や地域の方々と連携をしていますが、今回の熊本地震の復興に際しては、熊本県も南阿蘇村も東海大学に期待するところが大でした。阿蘇の農学部校舎の地盤には断層が走っているため、以前と同じようなかたちで体制を整えるのには困難がありましたが、我々として出来るだけのことをという強い想いで、今日に至りました。多数のメディアに記事が上がったことからも、多くの方に注目して頂いていたことを改めて感じた次第です。

■復興への一歩、新校舎完成 東海大阿蘇キャンパス
https://kumanichi.com/news/908746/

そこで今回は東海大学がどの様に地方との関わりを有しているかを話題にしたいと思います。今日、政府は「地方創生」をその大きな政策課題としています。大学がそれに関与する大きなこととしては、地方への人材供給ということが挙げられます。2018年度末現在、東海大学では20の道・府・県・政令指定都市とUIJターン等に関する就職協定を締結しています。今年なっては2月13日には高知県の尾崎正直知事と3月6日には千葉県の森田健作知事と共に署名に臨みました。

■高知県、千葉県と「就職支援協定」を締結しました
https://www.u-tokai.ac.jp/career/news/detail/post_29.html

こうした協定をいかに実効性あるものにしていくかが求められている訳ですが、その中心にあるのが東海大学キャリア就職センターです。水島所長・佐川次長のコンビで自治体の担当者との連絡を緊密に保ち、年に一回協定自治体の連絡会を開いております。私も出席しましたが、去る1月28日にも霞が関ビル東海大学校友会館に19の自治体の担当者の方々が集結いたしました。そこでは、各地方の魅力ある企業の発掘をし、それを出来るだけ早い時期から学生の皆さんに紹介していくとともに、「地方創生」を担える人材とのマッチング作業を自治体と大学で協同して行っています。まだ、十分な成果が出ているとは言えませんが、継続して行っていくべきであると考えています。

■公的機関との各種協定など
https://www.u-tokai.ac.jp/effort/regional_agency/municipality.html

ここまでは、理想的なことを申し上げて参りましたが、一方で大学はどこまで地域に対するコミットメントをすべきなのかという問題もあります。日本経済新聞が主催している地方創生セミナーに、私もパネリストとして参加したことがありますが、そこでも理想と現実の間にある大学の立場をご紹介したことがありました。誠に残念なことながら、東海大学では、過去に閉じた校舎や短期大学があります。東海大学を全体として維持・発展させていくために経営的な観点から行った苦渋の選択ではありましたが、それまで支えて下さった地域の方々からお叱りを受け、我々も本当に申し訳なく思っています。

そうした中で、地域の要望と経営の両立を図った事例を知りました。北海道にセイコーマートというコンビニがあることをご存じでしょうか。北海道という広大な地域に、その拠り所とも言うべき役割を果たしているお店です。その社長である丸谷智保氏に先般お目にかかる機会がありました。人口900人の集落からコンビニの出店を依頼され、社内では採算に合わないとの意見があり躊躇したとのことですが、地域の方々がお金を出し合って敷地を確保して下さったことと、輸送コスト・人件費を切り詰めることで黒字経営が出来ているとのことです。

■「セイコーマート東滝川店」オープン【丸谷社長インタビュー】
https://www.youtube.com/watch?v=7msTbMR4ttE

大学もこうした事例に学び、今までにない地域創生を支える機関として大いに工夫をして行くべきと思います。私は、その一つの方策として、いろいろな地域に一定期間滞在する回遊型教養教育を試みてみたいと思っていますが、それについてはまた別の機会にお話しさせていただきたいと思います。では、未だ元号が何となるかわかりませんが、最後の平成を文字通り穏やかにお過ごし下さい。