ゴールデンウイークも終わりましたが、如何お過ごしでしょうか。大学は本格的な学業のシーズンとなりました。今年度からは基本的に対面型の授業を原則として、一部リモート型の授業を取り入れた運営をしています。そのため、各キャンパスには学生が戻ってきており、活気を帯びて参りました。

2022年度には新たに6学部が新設され、大規模な改革になったことは既にお伝えしているところです。お陰様で、これら学部はほぼ定員を満たし、中には建築都市学部のように大きく定員を超えてしまったところもございます。入学者が増えることは結構なことですが、大学への補助金が減額される理由になる側面もあり、難しい調整が必要です。

■2022年度新設学部
さて、そうした改革・改組ですが、大学全体としては複数の学部をカレッジという単位で括り、それによって今まで学部だけでは出来なかった活動領域の拡大を、教員と職員の協働により図って行こうとしています。また、それぞれにカレッジにはカレッジオフィスを設けてワンストップの学生サービスの実現を目指しています。今年度の学長方針説明の該当部分を抜粋いたしましたので、ご参照下さい。

■2022年度学長方針説明(抜粋)

その新しくできたカレッジのまとめ役をプロボストといたしました。欧米の大学では学長に次ぐポジションとして大学運営にあたる役職です。例えば、国際学科が独立して抜けたあとの教養学部と新設の児童教育学部がリベラルエデュケーションカレッジを構成しています。リベラルエデュケーションカレッジでは、児童教育学部新設に際して筑波大学からお招きをした庄司一子さんにプロボストをお願いし、その脇を教養学部長の室田憲一さん、児童教育学部長の山本康治さん、カレッジオフィスマネジャーの小清水雪奈さんが固めています。

先日、そのカレッジの教職員全員による会議があり、それに参加して参りました(私も教員としては教養学部に所属しています)。これまでの大学ではとかく教員と事務員が、教授会、事務管理者会議など、別々の組織的な動きになりがちでした。そこで教職協働を実現するためにカレッジ制を設けたのですが、会議に参加して見ると、皆さんが自分の趣味を紹介し合ったりして、和やかで且つ一体感のある雰囲気を感じ取ることが出来ました。今後の展開が楽しみであります。

もう一つの今回の改革の大きな目玉は社会科学系の学部の再編です。対象となる学部は政治学科・経済学科からなる政治経済学部、その政治経済学部から独立した経営学部、さきほど申し上げた国際学部、4学科を1学科に再編した情報通信学部、渋谷校舎にある観光学部、更には法学部もここに入ります。これら6学部をまとめてグローバルシチズンカレッジを構成します。

このカレッジでは、1・2年生を湘南キャンパスで、3・4年生を東京キャンパスで教育を行います。東海大学には、このように2つのキャンパスをまたぐ教育形態は、かつて工学部の教養課程を札幌と福岡に設置したことがありましたし、設置当初の海洋学部は教養課程を沼津に置いていたという経験があります。しかし、今回の再編は社会科学系の学部活性化を目指したものであり、以前とは異なる面もあります。

2022年度に入学したその6学部の学生は、法学部を除いて2024年度より3・4年生は都内で教育を受けることになります。現在、東海大学は渋谷区富ヶ谷と港区高輪に校舎がありますが、2024年度からの各学部の授業は高輪校舎に集約することを現在検討中です。

グローバルシチズンカレッジの特色の一つには、SDGsに焦点をあてた教育・研究活動があります。その中心的な役割を担う研究所として、環境サスティナビリティ研究所を今年度設置いたしました。所長には客員教授として元環境省事務次官の森本英香さんをお招きし、お願いしました。またこの社会科学系を大きく束ねる役割を担う文系担当副学長には、慶應義塾大学経済学部長から中部大学副学長を歴任された細田衛士さんをお迎えすることが出来ました。

具体的な活動としては、既に4月より毎週日曜日の朝にTOKYO FMで「SDGs学部ミライコード」という番組を提供していますし、5月28日には対面とオンラインでの「地球市民セミナー」も開催する予定です。


しかしこの一部都心移転には、現在大きな制約が課せられています。それは2018年に成立した「地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律」いわゆる大学定員抑制法によるもので2019年度より施行されました。東京都23区内の大学生の定員増を認めないとするもので、2028年までの時限立法です。幸い東海大学は法律が施行される前に、今回の一部移転を可能とする3千人強の定員を都内に確保しましたので実現できますが、今後の都心での教育活動に支障が出る場合も予想されます。本来この法律は地方からの都内への学生の流出を防ぐという目的で設けられたものですが、当初よりその効果についてはやや疑問が呈されていました。

その後の大学を巡る議論は、コロナ対策による遠隔授業形態や大学経営の不正によるガバナンスの問題に焦点が当てられ、23区定員抑制については低調に推移しています。2028年度までに、その効果を検証することが法律に盛り込まれてはいますが、具体的な行動は見えていません。

そうした中で、今般東京都議会の政党である都民ファーストの会代表の荒木ちはるさんから、この問題に対しての意見を求められました。ご承知の通り都民ファーストの会は東京の地域政党です。大学の定員抑制については、全国知事会などでは地方の声を反映して賛同が得られていますし、全国型の政党では地域への配慮が求められます。その点で都民ファーストの会は、東京という地域の課題をその観点に立って考える政党と思います。

小池東京都知事は23区内の大学生定員抑制については批判的でありました。東海大学として東京の観点のみでこのことを論ずるつもりはありませんが、先日荒木さんとお目にかかった際には、次のようなことを述べさせて頂きました。「地方創生に関しては大学のみに大学生の流入を制限することを設けても、地方に魅力的な就労の機会がなければ、地方の大学を卒業しても結果的に就職は東京でという構図になってしまう」「都内だけで学生を抱えている大学と東海大学のように3万人のうち約6千名の学生が札幌・静岡・熊本にいる全国型の大学とでは、地方における人材育成への貢献が違う。こうした観点での配慮が欲しい」といったものです。荒木さんからは「東京都としてはこの制度の再検討を訴えており、その成果をきちんと検証し改めるべき点は改めるべきである」とのご意見を頂きました。今後の議論に大いに期待したいところです。

さて、この春始動したカレッジは全部で10あります。まだまだ紹介しきれない活動が沢山あります。先日東海大学同窓会の幹部の方からもう少しブログを頻繁に出すようにとのご叱咤を頂きました。また、来月にはお届けいたしたく存じますので、期待しないでお待ち下さい。