毎日、新型コロナウイルスの話題で、私もブログに書きたいネタが中々見つからず、ついつい筆が重くなっておりました。これも関東圏にいるからでしょうか、最近、また感染者数が増えている状況に心配が募ります。しかし、全国にキャンパスがある東海大学では、感染者の多くない静岡や熊本とまだまだ予断を許さない札幌など、地域毎にコロナ肺炎に対する感じ方にも温度差があるようです。私も3月からは自粛生活を続け、6月に入って久しぶりに都心へ足を運んだ次第です。

さてさて、嘆いてばかりもいられませんので、このコロナ禍の下で東海大学としてどのような活動をしたかご報告をしたいと思います。

CLEARプロジェクト
今回のコロナ禍は、これまでの学び方や働き方を見直す大きなきっかけとなりました。世間では、学校や大学は休校のイメージが先行し、停滞してしまったように映ったかもしれません。しかしながら、本学では、コロナ禍の行く末に気を揉むよりも、これをきっかけに今までできなかった課題の解決を目指そうと、次々施策を打ち出しました。それがCLEARプロジェクトです。CLEARとは、Crisis LEveraged Actions for Revitalization の頭文字をとったもので、直訳すると「危機を梃子にした活性化のための行動」となります。

大きな成果としてあげられることは3点あります。一つ目は大学構内の全面禁煙です。これまでも大学ではキャンパスのある都道県の条例にしたがい、指定喫煙所を定めるなどし、受動喫煙の防止に努めてきました。しかしながら、今回のコロナに関する一部の報道では、喫煙者の重篤化率は非喫煙者に比べて大きいと示されており、十分ではなかったと判断しました。以前から大学が提唱しているQOLの向上において、健康は重要な指標です。入構禁止措置が解かれた際に、学生に皆さんに安心して過ごしていただくためにも、日本全国7つのキャンパスで同時に進めています。

二つ目は困窮学生のための給付型奨学金です。これまで東海大学には、災害時などの奨学金は貸与型のものしかありませんでした。しかし今回のコロナ禍で影響を受けた学生の学びの継続を支援するには、新たな方式として定める必要があると考えました。予算には限りがあり、給付条件はありますが、一人でも多くの学生さんのお役に立てればと思っています。

【公式サイト】「新型コロナウイルス感染症対応応急奨学金(給付型)」を新設しました

三つ目は電子図書の導入です。キャンパスの入構禁止により、学生の皆さんには、これまで自由に利用ができていた図書館の利用を制限することになってしまいました。昨今のインターネットが発達した社会であっても、図書は学びを深めるうえで非常に重要なツールであると考えております。そこで、遠隔授業にも対応すべく2,000冊以上の電子図書を導入いたしました。決して十分な数ではなく、学習効果についても議論はありますが、分野を問わず様々な書籍が取り揃えられましたので、学生の皆さんにはぜひご活用をいただきたいと思います。

【公式サイト】学生、教職員が自由に利用できる電子書籍閲覧サービスを拡充しました

遠隔授業の効用
CLEARプロジェクトでも次々改革を進めてまいりますが、多くの皆様には、やはり大きな変化としては遠隔授業のことが気にかかるのではないでしょうか。実は、東海大学には、望星高校講座という通信教育をFM放送でいち早く開始したり、オンライン学習コンテンツの整備を積極的に進めてきた歴史があります。しかしながら、全学的な取り組みとして遠隔授業を実施したのは今回が初めてでした。当初は様々な不安も聞かれましたが、いざ開始してみると、これまでの形式よりも優れている点があるということに気が付きました。

東海大学は他の大規模大学と比べて、大教室講義というものは、さほど多くないのですが、中には出席者100人を超えるような科目もございます。そこでは教員の一方的な講義になりがちで、どうしても教室の最前列の学生と最後列の学生とでは、授業内容への集中度や理解度に差が生じがちです。その点、遠隔授業ならすべての学生が同じ条件、いわば最前列で聴講でき、またオンデマンド型であれば何度も講義を聴きなおすといったことも可能になります。

担当する教員の多くが対面よりも遠隔授業の方が出席率や授業へのコミットが高いという感触を得ているようです。さらには、遠隔授業ならば受講する場所や時間の制限が少ないことも大きな利点のひとつです。私自身、この春学期には熊本キャンパスの学生を対象とする遠隔授業を行いました。普段はなかなか交流機会が少ない地方キャンパスの学生に向けて直接話をすることができ、お互いに良い経験になったのではと考えています。

例えが適切かはわかりませんが、私はオンデマンドで行う遠隔授業は冷凍食品のようなものであると感じています。時間を選びませんから給食のように一斉に食べなくても、お腹のすいたときに食べられ、しかも、厳選された食材やレシピの下に提供される食品は、均一のクオリティーを維持できます。

しかしながら、毎日が冷凍食品では食傷気味になります。たまには愛情こもった手作りのごはんが欲しくなるでしょう。今後の大学の授業では、この手作りのごはんに相当するものをどのように提供するかが課題です。その点、東海大学は、大規模な大学ながら教員一人当たりの学生数が他の同等の大学と比べて少ないので、手作りごはんをつくる条件が整っていると言えます。

本学ではコロナ禍が一定の終息を見せるにしても、遠隔授業は継続して活用して参りたいと思います。しかし、少人数のゼミナールのような対面形式で行う授業は、まさに、手作りごはんであると思います。安全に配慮しながら、このバランスをどれ程充実させていくかが、これからの大学の評価を分けるものになると思います。

たとえ遠隔授業中心の開講形態が続いたとしても、東海大学には「人間的な密な触れ合い」を大切にする大学であるという矜持があります。オンラインを活用し、人と人との距離の取り方に濃淡をつけたとしても、それによって生じる時間やエネルギーの余剰をもって、目の前の学生との個々の触れ合いに注力していきたいと思います。

霞が関東海大学校友会館閉鎖
最後はひとつさみしいお知らせになります。東海大学は、幼・小・中・高・大、そして大学院までの卒業生や保護者の皆さま、教職員など、様々な関係者によって支えられていますが、そうした方々が集うことができる施設として、東海大学校友会館があります。東海大学の創立者 松前重義博士と三井不動産株式会社 江戸英雄社長(当時)との友好関係に基づき、日本初の超高層ビル「霞が関ビル33階」に1969年4月1日に開設され(現在は35階)、昨年には50周年を迎えたところでした。全国からの交通アクセスにも優れていたため、会議、研修会、同窓会、婚礼、生涯学習等の会場、交流サロンとして多くの皆さまにご利用いただいてきました。しかしながら、この度のコロナ禍の影響により、本年7月31日をもって閉館することとなりました。

【サイト】東海大学校友会館

この霞が関ビルの施設は残念ながら閉館とはなりますが、東海大学はこれからも卒業生や保護者の皆さま、教職員など、関係者が集う機会や場所を設けていきたいと考えています。これについては、折を見てお話ししたいと思います。

梅雨明けと夏が近づいてまいりますが、新型コロナウイルス感染症については第2波も迫ってきております。皆さまもどうか、体調崩されませんようご自愛ください。