例年に比べ暖かい日が多かった2月も終わりいよいよ年度末の3月に入りました。振り返りますと、2月7日は北方領土の日となっていますが、それに先立つ1月22日に、安倍総理とプーチン大統領との25回目の会談が行われ両国間の交渉に新たな展開の兆しが見えてきているようです。

■外務省「日露首脳会談」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/rss/hoppo/page1_000745.html

先々週には日本とロシアとの合作による「ソローキンの見た桜」という映画の完成披露試写会に行って参りました。日露戦争の際に捕虜となったロシア兵の四国松山にあった収容所での実話に基づいたロシア人将校と日本人看護婦の悲恋を描いたものでした。ガルージン駐日ロシア大使や東海大学同様にロシアと交流の深い創価大学の馬場学長も来られていました。この後、3月下旬には全国で上映されるようです。

ということで今回はロシアについて書いてみたいと思います。東海大学は長年にわたりソビエト・ロシアとの関係を続けて来ました。創立者松前重義先生は冷戦下であっても東側諸国と教育・研究、あるいは文化交流でパイプを持っていなければいけないということで、1970年代から当時のソビエトや東欧諸国であるチェコやハンガリー、東ドイツなどと関係を持っていました。今日に至る東海大学とロシアとの関係年表を添付します。これに従って記述を進めたいと思います。


モスクワ大学と東海大学の交換留学が始まった当時は、東京外国語大学のロシア語学科でさえもモスクワ大学では勉強することができなかったという時代です。貴重な留学体験ができたわけですが、モスクワ大学から留学生はいわゆる公安の監視対象になるという制限もあった時代でした。しかし、そうした障害を乗り越えて半世紀以上にわたる交流は、例えば在札幌ロシア総領事を長く務められたサプリンさんなど両国関係を支える多くの人材を輩出してきています。

東海大学は、モスクワ大学のみならず、ウラジオストクにある極東連邦大学とも協定を結んでいます。文部科学省の平成29年度大学教育再生戦略推進費「大学の世界展開力強化事業(ロシア、インド等との大学間交流形成支援)」では、本学は「ライフケア分野における日露ブリッジ人材育成」を主に極東地域を中心に行うことで採択されました。その一環として昨年の8月には、我々の海洋調査研修船「望星丸」を用い、同じく採択された北海道大学・新潟大学・近畿大学に加え、ロシアの極東連邦大学とサハリン国立総合大学の学生を乗せた洋上研修(ウラジオストク航海)を行いました。約10日間の航海でしたが、船での生活の密度は陸の10倍位高いので、参加学生は 100日位一緒に生活したような感覚になるほどで、最後に日露の学生同士が抱き合って涙を流して別れを惜しむ姿はまさに感動的でした。この航海の参加学生のなかから、今後の日露交流を担う人材が育って欲しいと願っています。

■「大学の世界展開力強化事業」タイプAに採択されました
https://www.u-tokai.ac.jp/international/news/detail/post_74.html

■「ウラジオストク航海」の出港式を挙行しました
https://www.u-tokai.ac.jp/international/news/detail/post_130.html

■「ウラジオストク航海」を終えた望星丸が清水港へと帰港しました
https://www.u-tokai.ac.jp/international/news/detail/post_131.html

昨年は「日本におけるロシア年・ロシアにおける日本年」ということもあり、首脳同士も大変近しい間柄にあります。私自身も首相官邸が主導する「日露交流促進官民連絡会議」の唯一の私立大学学長として会議に参加しています。そうした関係もあって、去年9月のウラジオストクでの東方経済フォーラムの最後、安倍総理と日本からの参加者との懇談に呼ばれました。飯島三井物産会長、名和北海道大学総長など各界の代表がお話をされる中、私も発言を求められたので、「私が東海大学に勤め始めた30年以上前は、東海大学は“容共集団”だと言われていたのですが、総理が日露間の交流に尽力してくれたおかげで、日露交流に他の大学も参加するようになり、隔世の感がある」と申し上げました。安倍総理は大笑いして、「今どき容共集団というのは久しぶりに聞いた」と話をされていましたが、総理随行の若い官僚の方は、意味がわかっていなかったようでした。

■山田清志学長と吉川直人副学長がロシア・ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムに参加しました
https://www.u-tokai.ac.jp/international/news/detail/post_136.html

さて松前達郎総長と握手をしているプーチン大統領(当時は首相)の写真は、今から10年前に東海大学が日本の大学としては初めて、プーチン大統領に名誉学位を差し上げたときのものです。本学が長年日露交流に尽力したことと、何よりも柔道を通じて親交の深い山下副学長の存在によって、この貴重な機会を与えられたものです。次回、プーチン大統領の来日の際、日程に余裕があれば、名誉学位授与の返礼のスピーチをまだいただいていませんので、実現するかどうかはわからないのですが、大学にお越しいただいて、若人に21世紀の日露関係の話をしていただくということをお願いしています。


では春本番が待ち遠しいこの頃ですが、皆様どうぞご自愛の上、お過ごし下さい。